thank you for your clap!

case.24 善法寺伊作の場合


あぁ、まただ。また彼は穴に吸い込まれるように落ちている。
さすが、安心安定の不運委員長と言うことだろうか…この目で見るまでは信じられないと思っていたあの頃が懐かしい。
(こう、毎日のように落ちているサマを見ると信じざるを得なくなるのが現状なのだ。)


「…善法寺くん、大丈夫ー?」
「大丈夫…だけど、助けてほしいなぁー、なんて…」


彼は膝を抱えながらハハハ、と乾いた自虐的な笑みを浮かべて穴の中でぼんやりとしている。
助けてあげたいのは山々なのだけど、あいにく今のわたしには彼を助け出すための道具と手段がない。
誰かを呼びに行くのが上策だと思うのだが、その間に第二、第三の犠牲者(と言う名の保健委員) を生み出しかねない。


「あ、ねぇねぇ!手ェ伸ばしたら届くかな?」
「…さぁ、どうだろうね」
「試してみる価値はあるかな…っと…」


穴の中に手を伸ばせば、辛うじて届く深さでほっと胸を撫で下ろす。
そのまま、がっちりと彼の手を掴んで後は引き上げるだけ!と、思ったのだ、が。


「…さんまで落ちてどうするの!!!」
「ごめーん、わたしに善法寺くんを引き上げられるだけの力はなかったわー」


がっくりとうなだれる彼と、まるで反省の色が見えないわたしと、穴の中。


「まぁ、誰か助けてくれるって…たぶん?」


ジト目でわたしを見つめる彼を、笑ってやり過ごす。
そして、お互い気持ちが全く噛み合わないため息をついて、青々とした空を見上げる。


「空、青いねぇ…善法寺くん」
「…そうだねぇ、さん」


穴に落ちるのがステイタス。
12 2/9


送られたメッセージの確認

連続拍手は10回まで、コメントは半角400文字(全角200文字)まで可能です。

フォーム

res OK

script : PatiPati (Ver 4.4)   skin : {neut}