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case.25 長宗我部元親の場合
「どうした、水面ばかり見つめて」
「あ、いや…」
生まれた時からずっと、山の中の風景しか知らなかったわたしには、目の前に広がる青色が真新しく見える。
きっと、こんな不思議な出来事がなければ、わたしはずっとこの青を知らずにいただろう。
「そんなに海が珍しいか?」
「…ずっと、山育ちでしたので。とても、綺麗ですね」
初めて浴びる潮風、キラキラ光る海面、跳ねる魚影、すべてが真新しい楽しさに溢れている。
知らないことを知ること、一時的にでも開放されたという事実がわたしの心を浮かれさせた。
わたしも、みんなみたいに笑えるんだ。そう気付けただけでも、だいぶ変われたような気がする。
「海は飽きないだろう?」
手に持った三味線が波のうねりに合わせて激しくかき鳴る。
心地よい三味線の音色にゆったりと身を任せながら、弾き手の海のように蒼い目をじっと見つめた。
山の緑しか知らない、今までに見たことのない海の色。
「綺麗ですね…海も、青い色も、元親殿の、瞳も」
「はっ!ふざけたことを言う」
「いや、至って真面目なんですけども」
ふてくされているわたしと、それを見てカラカラと笑う彼は、遠出をしているというのにいつもと何も変わらない。
ぐんぐんと速度を上げて進んでいく船は、そろそろ木津川口へ着く頃だろうと誰かが言う。
「そろそろ目的地だ。降りる準備をしておけ」
「…はい」
「見つかるといいな、」
「えっ、何がですか?」
下船準備をしていたわたしに不意に投げつけられた言葉にきょとんとしていたら、彼は柔らかく微笑んで口を開いた。
「お前の、仲間が」
…あれこんなキャラでしたっけあれ???
12 2/12
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