「(…柿?)」


朝、目を覚ますと枕元によく熟した柿が二つ。
大方、左近辺りが置いていったんだろう、とぼんやり思った。


「…ん?」


置かれた柿の下に、白いものが一つ。
柿を退かして白いものを手にすると、

「よかったらどうぞ」

と一言だけ書いてある。
ぼんやりと、覚めきっていない頭が一気に覚めた。

まだ温もりの残る布団から抜け出し、素早く平服に着替えて部屋から飛び出す。
頭で考えるより早く、足はある場所へと向かっていた。


「三成殿、何かあったんですか?…息を切らせて」


三成と同じく、平服姿の幸村を見たとたん、三成の頬は紅く染まる。


「顔が紅いようですけど…お風邪を召されましたか?」
「い、いや!違うのだ幸村!」


一人気持ちが空回っている三成をよそに、のほほんとしている幸村は、なら良かったと一息ついた。
それからすぐに、幸村は三成を室へ通す。中はほんのり暖かい。


「それで、三成殿は何故ここへ?」
「あの、だな…その…よ、よかったら…一緒に…」


しどろもどろになりながら、三成は持ってきた二つの柿を幸村に見せた。
食べないか、そう言おうとして、三成は言葉を飲み込んだ。
つい今まで、手の中にあった柿が跡形もなくなくなっている。
辺りをきょろきょろと見渡しても、転がった後はおろか橙色すら見つけられなかった。
そこに、一つの影が横切る。


「にゃは〜、いただきィ〜!」
「あ、こら!くのいち!」
「この柿はありがた〜くいただきま〜す!」
「待て、こら!」
「若さ、若さってなんだぁ〜!」
「使いどころが違うぞくのいち!!」
「(…ツッコミのポイントはそこか?)」


今まで三成の手の中にあった二つの柿は、今やくのいちの手の中。


「すいません…手癖の悪いやつで…」
「それは、いい。別に怒ってはいない」
「そうですか。本当は、あの柿を食べようと持ってきてくださったんですよね?」
「それもある、だが、本当は…」


少々くのいちを恨めしいと思いながらも、また頬をカァと紅くしながらぽそぽそと三成は呟く。


「本当は、幸村に…会いたかったんだ」




を持って、





「はぁ〜あ、何やってんだろ、あたしってば…」


二人がよく見える場所で、三成から奪った柿をもしゃもしゃと食べる。
口からつっと汁がこぼれる。甘い甘い、極上の味。


「(でもま、いっか。この柿おいしいし!)」








***

柿ネタ。使いたかったけど気付いたら柿のシーズン過ぎてるよ!!笑
まァ、中途半端な感じで。
今回もくのオチってどうすればいいんだろう、もうくの子大好き!ぁ

06 12/31