「アマテラス君」

「…アマテラス君」


「・・・・・・・アマ」
「ウシワカは、そんなに人の眠りを邪魔したいのか?」


風そよぐ草原で、寝転んでいる慈母の名を呼ぶ。
何度も呼ぶ慈母の名。返らない反応に背筋が凍る思いをした。


「そういうわけじゃないけど…ユーが返事しないから…」
「寝ている奴がどうやって返事をしろと…?」
「…ソーリー。ちょっと、不安だったから、つい」
「不安?」


真っ直ぐな瞳が、ウシワカの目をじっと見つめる。
その瞳に少したじろいで、視線を反らすように目を伏せた。


「ウシワカがそんなこと口にするなんて、珍しい」
「…そうかい?」
「なんとなく、悲しそうな目をするときはあっても、それを口にしたことはなかったよ」


起こした体を草原に戻し、それだけ言うと目を閉じた。
さぁっと。一筋の風が慈母―――アマテラスとウシワカの間をすり抜ける。


「(…ユーは、周りをよく見てるんだなァ)」


くすくすと笑って、アマテラスのさらりとした白い髪の毛に指を絡ませる。
それから静かに目を閉じた。目を閉じた先の闇に映るのはこの先の出来事。
しかし、何があろうとも彼女だけは護り抜く――そう、自分に誓いを立てた。


「アマテラス君…ユーだけは、命に替えても必ず」


―――護るよ。




遠い未来に思いをはせて、
(たとえば、高天原が滅ぶとして。)




06 10/15(07 12/12)
(捏造高天原。アマ公は中性的なしゃべり方だといいな!)