「アマテラスくぅーーん!今日もプリティだね!」
「あうん?」


どこからともなく現れたウシワカに、いつもと何も変わらぬ反応を返す我らが慈母アマテラス大神。
ウシワカに何をされても動じず、ただ寝そべるばかりのアマテラスを見て飛び出してきたのは旅絵師イッスン。


「やいやいインチキ野郎!!気安くアマ公に触ってんじゃねェやい!」


シャキン、と電光丸を抜いて、アマテラスにデレデレなウシワカを威嚇する、が。


「アマテラス君、最近お風呂入ってる?」
「わう?」
「せっかくビューティフルな毛なみなんだし、ミーとしては毎日でもお風呂に入ってもらいた…」
「聞きやがれこの野郎ーーー!!!」


イッスンの怒声に驚くアマテラスをよそに、表情がぴくりとも変わらないウシワカ。
ますます苛立つイッスンに、ウシワカがとどめの一言を投げ掛ける。


「あれぇ、ゴムマリ君…いたんだ?」


プツン、とイッスンの中の何かが切れた音がした。


「…アマ公、小槌」
「わんっ!」


アマテラスが小槌でイッスンをポンと叩くと、虫程度の大きさだったイッスンが、たちまちウシワカより少し小さいくらいの大きさで現れた。


「おいインチキ野郎、いい加減決着つけようぜぇ…」
「…何の決着なのかは全くわからないけど、ゴムマリ君がやりたいなら、やってもいいけど?」


その言葉を聞いて、イッスンの目がキラリと光る。


「先手必勝ォ!」


素早い動きでウシワカの懐へ飛び込んだイッスンは、その首もとにピタリと刃をつきつける。
油断して一瞬の隙をつかれたウシワカは目をぱちくりとさせる。


「…ゴムマリ君、これはちょっと卑怯なんじゃない?フェアじゃないよ?」
「へッ!そんなの知らねぇなァ!」


ニヤリ、と悪どい笑みを浮かべるイッスンを見て、ウシワカは呆れたようにため息を一つ。


「ハイハイ。ミーの負けだよ、ゴムマリ君」
「お…ッ前はいちいちムカつく言い方しやがってよォ!!」


怒っているイッスンを後目に、ウシワカはアマテラスから小槌を借り、イッスンをポンと叩く。
人間大だったイッスンは、元の大きさに戻ると、アマテラスの鼻の上へと跳び乗る。


「…それじゃ、そろそろ行こうかな。ゴムマリ君に負けちゃったしねー」
「ケッ!とっとと何処へでもいっちまえ!」


アマテラスの頭をやんわりと撫で、ウシワカは何処かへ行ってしまった。


「…インチキ野郎もやっといなくなったことだし、行くか?アマ公」
「ぅわん!」


それから、一人と一匹は風のように両島原を後にした。




小さな嫉妬
(アイツにだけは絶対負けねェ!)




07 5/31(07 12/12)
(ウシ→アマ←イッスンみたいなのが好きなのかもしれない。←)