「ん?何アルか、これ」 「あぁ、さっき来たお客さんの忘れ物かなァ」 「えいっ」 万事屋に来た依頼人が置いていったもの、それは… 「わぁ、すごい、すごいアルよ新八!」 「な、な、何だこりゃァァァ!」 ポケットサイズなうちでの小槌だったのです。(そんな馬鹿な) ぽけっとこづち。 「ふーん、そういうものアルか」 「でも何でこんなもんが…」 「ったく、人が一息付いてたときにぎゃあぎゃあうっせーぞ」 「…ストレートになぁれ!」 「ッて!!…神楽!いきなり何しやが…!!」 先程の依頼人の忘れ物、うちでの小槌の使い方を新八から教わった神楽は、この借家の主――――坂田銀時に標準を合わせた。みごと神楽のいたずら心の餌食になった銀時の銀髪くるくる天然パーマは、見事、 「す、すごい…ストレートだ、ストレートの銀さんだ」 「ひゃっほォォォ!銀ちゃん、新八、ちょっくら遊んで来るアル!行くヨ、貞春!」 「ちょ、神楽ちゃん!それもってっちゃあだめだろォ!?」 一回の実験で味を占めた神楽は、新八が止めるのも聞かずに貞春を連れて外へと飛び出していった。一方、くるくる天然パーマをさらさらストレートにされた銀時は、ちらちらと鏡を見ながらニヤリとほくそ笑んでいたという。 「さー、どこに行こうカ…」 貞春に乗ってかぶき町を軽やかに移動していると、いつもの散歩コースである真選組屯所前でぴたりと止まった。いつもなら何もせずに素通りするはずなのに。神楽はぴんとある人物を思い浮かべた。 「アイツで遊ぶカ、貞春はここで待ってるアル!」 勢いよく貞春から飛び下りた神楽が一歩屯所の中に足を踏み入れると、上から声が降ってきた。 「こんなところに何用でィ、チャイナ」 「…出たナ。そこから降りてくるネ!」 「嫌だね、何でチャイナの言うこと聞かなきゃ…」 「降りろヨ」 塀の上にいた沖田は、会話の途中で同じ場所に上がり、そのまま蹴り下ろした。そして何事もなかったかのように下に降りた神楽は、ニヤリと笑い、ポケットからあの小槌を引っ張り出した。 「ッてー…おいチャイナ、何しやがるんでィ…」 「素直に、なれッ」 「った!!」 小槌を沖田の頭めがけておもいっきりぶっ叩いた。それなりに固いものを、神楽のバカ力で頭に叩き込まれた沖田は当然のように意識を手放した。(と言うか、神楽は小槌の使い方を少し間違っている気がする。) 「…何見てんだ、チャイナ」 「ちょっとやりすぎたネ。急に動かなくなったからびっくりしたアル」 「いてて…まだ痛ェや。もうちっと手加減ぐらいしたら…でけぇ口」 「(き、気持ち悪いアル…)」 神楽はぽかんと口を開けたまま、ものの数十秒で目を覚ました沖田をじっと見つめていた。はたして、沖田はホントに素直になったのか?それはこれからの会話で察していただきたいと思う。 「なんでィ、その口は。かわいい顔が台無しでさァ」 「(ヒィィ!何、何アルかコイツ!キショイ、キショイネ!)」 「そのおてんばもどうにかなりやせんかねェ」 「・・・・・・・・」 「俺ァ、チャイナが心配だから言ってるですぜ?」 「んなッ・・・・!?!!」 この言葉にカァと顔を紅く染めた神楽は、握りしめていたうちでの小槌を力一杯、沖田に叩き込んでその場から風のように逃げてきた。定春の上で風を感じながら、神楽は紅く火照った顔を冷ますかのように万事屋へ戻っていった。一方、また神楽の小槌によって気絶させられた沖田はと言うと、 「…あのチャイナ、今度会ったら覚えとけよ」 ボロボロに壊れたうちでの小槌を握りしめて、神楽が消えていった方向をじっと見つめていた。沖田は小槌を叩き込まれる前の事を覚えていないらしい… 「…そうして、私が夢にまで見たあのうちでの小槌を完成させたのです。お礼と言ってはなんですが、試作品を置いていきますので是非使ってみてください。ちなみに、効果は3分です。・・・だそうですよ、銀さん」 「あああ!!お、俺のさらさらストレートヘアーが!」 「た、ただいまアル」 「あ、お帰り神楽ちゃん。…あれ?小槌は?」 「小槌・・・・・!!し、知らないアルあんなの!!」 「おい神楽、持ってこい、持って帰ってこいィィィ!」 「うるさいアル!もう小槌なんて知らないネ!!」 万事屋に帰ってきた神楽は、銀時に散々小槌の事を聞かれたのに嫌気が差し、早々と押入れに潜ってしまった。神楽の顔は紅いままだったとさ。 *** 初沖神。お前バカじゃないのと。 素直、と言うかさらっと神楽に告る総悟が書きたかっただけです。 結局告れてないしな!うちでの小槌欲しいなァ・・・(The☆現実逃避) 06 7/20 |