「よし、出来た!」
「幸村さま〜?何やってんですかァ?」
「・・・・・、秘密だ」
「あ、酷いんだ〜!」
「(喜んで、くれるだろうか…)」


小さな期待を胸に、出来上がったそれを重箱に詰め、幸村はいそいそと調理場を後にした。


「…はっは〜ん、そーいうことォ」


重箱に入りきらなかったのか、ポツンと残されたそれを一つ口に運ぶ。くのいちはニヤリと笑い、調理場から姿を消した。







を、キミに。











「…暇だな。何か面白いことはないのか、左近」
「知りませんよ、良いじゃないですか、暇で」


三成は左近と二人、のんびりとした昼を過ごしていた。仕事もやっと一区切り付いたところで、小休止と言ったところだろう。


「(あ、いた)三成殿〜!」
「…幸村?どうした、何かあったのか?」
「いや、たいした用事ではないのですが・・・」


そこに、いつもの戦場で会う幸村とは少し違う、平服を着た幸村が現れて三成は不意に胸を高鳴らせた。(それを言ったら、三成も左近も平服なのだが。)


「あの、これを…」
「・・・重箱?」


幸村がそっと持ち出したのは漆黒の重箱。それを三成に渡すやいなや、もしよろしければ食べてください。と一言残し、三成が呼び止めるのも聞かずにさっさと戻っていってしまった。
その場に一人残された三成は、つい今手渡されたばかりの重箱を見つめ、おもむろにそのふたを開けた。重箱の中に入っていたのは薄桃色の餅を濃い緑色の葉で包んだ、


「桜餅・・・か」


そしてその上に一枚の紙。それには幸村の字で三成のことをとことん気遣った文章が書かれていた。一字一句逃さず読んだ三成は、カァッと頬を赤らめて誰にも聞こえないような小さな小さな声で、ありがとう、と呟いた。
その手紙を大事に懐にしまい込んだ三成は、幸村お手製の桜餅を口に運んだ。粒あんの甘さと塩漬けにされた桜の葉のしょっぱさが絡み合みあい、何とも言えないおいしさが口の中に広がる。


「(・・・・・・・・・うまい)」


黙々と、桜餅を口に運んでいて、何かが足りないことに三成は気が付いた。さっきまで隣にいたはずの左近がいつの間にかいなくなっていた。


「…!!…左近、左近!!」
「(ああもうせっかく気ィ利かせてあげたのにッ!)…はいはい、何ですか」


一方、三成に無事桜餅を渡せてよっぽど嬉しかったのか、幸村は上機嫌だった。その背後にくのいちがいたとも知らずに。


「うふふふ、みィ〜ちゃったァ〜。幸村さま、随分嬉しそうですね〜?」
「、うぉあ!くくく、くのいち!びっくりさせるな!」
「にゃはは、すいませんでしたッ!ま、それはそうと。桜餅、おいしかったですよん」
「あぁ、そうか。よかった…」
「きっと三成どのも喜んでるんじゃないですかねェ〜?」


にまにまと笑うくのいちが吐き出した言葉に、幸村は少し頬を赤らめながらそ、そうか。とたどたどしく言葉を紡ぎ出した。


「(・・・全く。二人ともおニブさんなんだからァ)」


と、心の中で小さくツッコミを入れた後、くのいちは幸村の前からいなくなった。その場にぽつりと一人残された幸村は、ハッと我に返り自室へと戻っていった。

それから数日経ったある日。


「何、幸村に料理で礼をしたいだと?」
「ああ…それで、何かコツはないか?」


三成は、あの幸村お手製桜餅と手紙に大層感動したらしく、そのお礼を同じ土台である料理でしたいと思い、兼続を訪ねていた。


「ああ、それなら簡単だ」
「何、本当か?」
「本当だ。どんな料理にも愛が籠もっていれば大丈夫だ!」
「・・・・・・・・・お前に聞いた俺がバカだったよ」


急にイキイキとし始めた兼続は愛について語ろうと口を開いた、が三成が背を向けて帰ろうとしたのを見て、慌ててその口を閉じ、三成を引き止めた。


「わー、すまん!お願いだから帰らないで・・・」
「・・・しっかり考えてくれ」
「わかっている。…それなら、私と一緒に作る、というのはどうだ?」
「…一緒に?」
「手は貸さない、だが口出しはする。言われたことをこなすぐらい、簡単だろう?」


数秒ほど間があって、三成はこくりと頷いてみせた。目をらんらんと輝かせた兼続は、明朝、此処に集合だ!と一言言い残し、三成を置いてどこかへ行ってしまった。三成は、兼続に言われたことを思い返しながらてくてくと戻っていった。
そして次の日の朝。兼続に言われた通りにやってきた三成は、気合い十分な兼続を見て少しやる気を出した。近くの、それでいて幸村に見つからないように調理場でひっそりとお礼の料理づくりが始まった。


「とりあえず、初心者にも簡単なよもぎだんごをつくることにする。材料はすでに用意してある」
「ああ、すまないな・・・」


そして、二人のよもぎだんごづくり―――――と言う名の格闘が始まった。


「違う!そうじゃなくて、そこに米粉を入れる!」
「・・・・むぅ。なかなか難しいな」
「…だッかッらッ!そうではない、こうだ!」


なんやかんやとよもぎだんごとの格闘を続け、何とか形になった頃には陽が暮れ始めていた。出来上がったよもぎだんごを一つ口に入れると、兼続の顔にやんわりとした笑顔が浮かぶ。


「さ、それを詰めて持っていくといい」
「・・・・兼続、助かった」
「頑張ってこい、三成」


よもぎだんごをこの間の重箱に詰め、三成は幸村の所へ急いだ。


「ゆ、幸村ッ」
「…、どうかしましたか?三成殿」


ハァハァと息を切らせていた三成を、ニコリと柔らかい笑顔で迎えた幸村。一瞬、呼吸をするのも忘れてその笑顔に見入っていたが、両手の重みが本来の目的を思い出させる。


「こ、この間は、桜餅・・・・・う、うまかった」
「そうですか、喜んでもらえてよかったです」
「その礼、といってはなんだが・・・」


頬をほんのり紅く染めたままぽそぽそとしゃべる三成をニコニコとした笑顔のまま聞き逃すまいとしっかり聞いている幸村。
そして、三成はあの時の幸村と同じように、重箱をそっと幸村に手渡した。


「良かったら、食べてくれ」
「…よもぎだんご、これは、三成殿が?」
「あ、ああ」


朝から頑張ったんだ、ともごもごと言葉を紡ぐ三成を見ながら、重箱の中に入った不揃いなよもぎだんごを一つ口に運んだ。


「とてもおいしいです。三成殿、ありがとうございます!」


にっこりと、幸村は満面の笑みを浮かべた。その笑顔に三成は顔を真っ赤にしながら戻ってきたという。


「(幸村さまも、罪な男ってか〜?)」


木の陰の中、にまにまと笑みを浮かべるくのいちがいたとかいなかったとか。













***

…や、やっちゃった、やっちゃったよどうしよう!!
まず最初に謝っておきます、ごめんなさいorz
アホな事してごめんなさい!ごめんホントごめん!無茶してゴメンンンンorz
とりあえず、元ネタ、と言うかネタ全面的にお借りしました。
良ければ、いただいていってくださいませ、こんなでよければ。orz
某ちゃんへ(ドキッとか思ってるそこのあなたですよ!何)


06 7/26